遙かなるUTMB

UTMB2017完走に向けて日々のトレーニングや備忘録

最大酸素摂取量 VO2max

最大酸素摂取量(VO2max)は1分間あたりに身体で消費される酸素量のことです。VO2maxは中距離から長距離の走力をある程度反映し、特に中距離走のタイムと相関が高いことがわかっています。また坂を登る能力もVO2maxと相関が高いと言われています。VO2maxが高いとはどういうことかを考えてみたいと思います。

酸素を運ぶのは赤血球中のヘモグロビンです。血液100mlでおよそ酸素5ml(1気圧で)が組織に送り込まれます。血液中に物理的に溶ける量はわずか0.3mlです。どれだけ組織で酸素が消費されたかを測ったものが酸素摂取量です。

余談ですが高濃度酸素水なんかもし酸素が溶けてたとしても、飲む瞬間にはほとんどの酸素は大気に逃げてしまいますね。百歩譲って、胃の中に入っても血液中にはほとんど溶けませんので組織に移行する量はほんのわずかです。もし本当にすごい量の酸素が摂取できたら水中で高濃度酸素水飲みながらダイビングできますね。

VO2maxを決める因子とて次の3つが候補となります。

1. 心肺機能

2. ヘモグロビン濃度

3. 筋機能

どれが一番VO2maxを決めているのでしょうか?

実はほとんど1,2で筋機能の関与は比較的少ないと言われています。これは高地で酸素供給量が変化したり、血液ドーピングをしたりすると、そのままVO2maxは影響をうけるという結果から推測されています。

 

というわけで順に説明していきましょう

肺機能 一般的には肺活量が運動能力を決めているということはなさそうです。というのも最大運動時でも1分間の換気量は120lくらいらしく、これは安静時に最大に努力した場合よりかなり低いようです。もちろん、肺活量が大きかったり、呼吸筋が強いほどよいとは思いますが、トレーニングの重要ターゲットではなさそうです。実際に呼吸筋を鍛えるトレーニングがVO2maxやパフォーマンスに全く効果がなかったという報告あります(Does respiratory muscle training increase physical performance? - PubMed - NCBI)

心機能 身体に送り込める酸素量は心臓から送られる血液量に正比例します。そしてこの血液量は 心拍数 x 1回あたりの心拍出量になります。つまり、運動時の心拍数が高く、さらに血液を送る左心室が大きく強いほど心機能が良いということになります。悲しいことですが、この能力はかなり若いうちに決まってしまうようで、歳をとってからはあまり大きな改善はみられないようです。さらに悲しいことに最大心拍数は歳とともに下がってきて、概ね 220-年齢程度といわれています(個人差が激しいです)。とはいえ、適切なトレーニングで少しでも鍛えたいですよね。

心機能のトレーニング トレーニングとしては大きく分けて、ペース走と高強度インターバルトレーニングで分けて研究されていることがほとんどです。ペース走は60-70%VO2maxの強度、高強度インターバルトレーニングは1分高強度-1分rest x 10みたいなトレーニングです。どっちが心臓を強くすると思いますか?

あまり正確にはわかってませんが、ペース走なんです。どちらのトレーニングもVO2maxを増加させますが、ペース走では心機能が、インターバルでは筋機能が改善します(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20473222)。心臓は比較的低い強度の運動で、一回拍出量は頭打ちになり、それ以降は心拍数が増加するだけとなります。要するにある程度の運動強度で心筋は最大限の力を出していることになりますので、長期間の運動のほうが心機能には重要だということです。

筋機能 筋機能は比較的単純に考えることができます。筋肉を動かしているのはATPですが、要するにたくさんのATPが作れれば長距離では足が速いということになります。ATPを作っているのはミトコンドリアですので、ミトコンドリアの機能が高く、数が多く、さらにATPを作るのに必要な酸素がたくさん来るように毛細血管がたくさんあれば良いことになります。ミトコンドリアは、ほぼ母親から遺伝しますから母親が優れた長距離選手や長寿家系なら優秀なミトコンドリアを遺伝していることになります。質は仕方ないにしても増やせばよいということで、ミトコンドリアを増やすにはPCG-1aという転写因子が筋肉内で増加すれば良いことがわかっています。だから、このPCG-1aが増える運動をすればよいということです。これはインターバルトレーニングなどの高強度トレーニングで増えることがわかっています。注意すべきはVitC, Eなどのサプリの摂取がPCG-1aの増加を抑制する働きがあることがわかっています(Vitamin C and E supplementation hampers cellular adaptation to endurance training in humans: a double-blind, randomised, controlled trial. - PubMed - NCBI)。抗酸化サプリは身体に良いかもしれませんが、摂取しすぎると、自分自身の抗酸化能力の発達を妨げる可能性があるようで注意が必要なようです。

 

ヘモグロビン量ぬかしました。鉄をしっかりとれということです。ランナーは貧血に注意。ヘモグロビン量が15から13に下がったらタイムはフルマラソン3時間の人は3時間30分かかることになります。それくらいヘモグロビン量は重要です。

 

ぐだぐだ書きましたが、結局VO2maxを高めたかったら、ペース走もインターバルも両方バランス良くしろということで、伝統的な練習方法はやはり正しいですよ、ということでした。