遙かなるUTMB

トレランにはまってUTMBまで行ってしまった外科医の日々のトレーニングや備忘録

信越五岳トレイルランニングレース2022 その3

緩やかな登りをのぼると笹ヶ峰グリーンハウスだ。ここはペーサーとして出た時の記憶が結構強く残っていて立派なエイドだった気がする。実際大きいエイドで、ナンバーを呼んでドロップバックをすぐに出していただいた。

しょーやんと清家くんがきてくれた。しょーやんは佃さんのペーサーだから、佃さんはどこかで抜いてきたんだなあって思う。ドロップの中に入れておいた、ウイダーインゼリー2個をあっという間に平らげて、ジェルを補給して、水を飲んで、出発。

前はどれくらいって聞くと、出て行ったばかりですよって。岡田さん?って聞くとその通りだった。しょーやんが岡田さんん強いよねって言っている。奥信濃のときよりだいぶ手前で追いつきそうで嬉しい。川崎さんはだいぶ離れてるよねって聞くと、でもこのエイドで10分以上いたよって教えてくれた。みんなにもっと前いけると言われてすぐに出発した。ここも滞在時間は3分。

あれ、遠くに走ってるランナーが見える。岡田さんのような。ここからは牧場の周りを走る。ペーサーで出た時はなんて走りにくいところだろうって思ったけど、今回は割と走りやすかった。あっというまに岡田さんに追いついた。岡田さんは袋にいれたバナナを食べながら、こんな大事な時にハンガーノックになってしまいました。って言っている。ハンガーノックなんて食べれれば治るから、食べながら歩いていたら必ずよくなるよって声をかけて先に進んだ。これで3位になったって勘違いしていて、岡田さんに4位だって教えてもらった。前は下屋さんで、10分くらいって。

とりあえず、抜かすと少し元気がでて、なんとか草地を走り続ける。少し降るとコンクリートの道にでて、階段で上るところがある。階段の終わりかけに下をみると岡田さんが走ってくるのが見えた。あんまり離れていない。もう元気になったかもと焦りながら、少しペースを上げた。ここからの記憶が実はあんまりない。それほどアップダウンなくだらだら進むけど、緩い登りを走るのがきつくなってきていた気がする。残りはあと45kmほどだが、最後の林道は基本下りなので35km走れればなんとかなるって思いながら走った。ちょっと歩きも混じってきたようなきもする。予定通り、ジェルも摂取して、西登山口のエイドに到着した。ここは水だけ補給できる。入れ替えたボトルに入れておいたモルテン320に水をいれて溶かす。前どれくらいですかって聞くと、もうすぐそこだよって言われる。疲れてきたので、登りはゆっくり登って、下りは頑張る作戦で行くことにする。登りをがんばるのが嫌なだけかもしれないが。登ってからは、がれたトレイルか林道か忘れたけど下りを割と調子良く飛ばしていたら、とうとう下家さんにおいついた。ペーサーと一緒に走っている。下りでそのまま抜いて、割と快調に飛ばした。ヴェイパーのおかげかも。大橋林道のエイドにはあっという間に到着した。前はどおですか?って聞くと数分って教えてもらう。これは千載一遇のチャンスかもしれない。

そう思いながら、比較的平坦なトレイルを淡々と進んでいくが、なかなか次の戸隠スキー場には到着しなかった。記憶の中では、なんかロードを渡って、登っていくとついた気がする。同じような場面が何回も出てくるけれど、なかなか到着はしない。かなり疲れてきて、登りはゆるくても歩くことが多くなってきた。今3位だし、もう十分だよと頭が主張する。そうこうするうちに、コンタクトが曇ってきてだんだん見えなくなってきた。汗が目に入りすぎると、なんか白いタンパクみたいなのがコンタクトにつくやつだ。少し暗くなってきて、路面がみにくくなってきてスピードがさらに落ちる。苦しみながらももうすぐエイドですと言われるところまでやってきた。広い広場があって、眼が見えないからどっちにいったら良いかわからない。向こうのほうで人が呼んでくれている気がして進んでいくと、細いトレイルがあって、そこを抜けると戸隠スキー場エイドに到着した。疲れて切って入ったエイドでなんの期待もしていなかったのに、エイドに110kmの選手が。向こうも驚いたような顔をしていたような気がする。ペーサーと一緒で2人はあわてて出て行った。バナナをたべて水を飲んだら終わりで、行こうと思ったけど、眼が見えない。中川さんがいたので、水のボトルをもってもらい、両方のコンタクトを外して、水で洗ってみた。再装着するもあまり変化はなかった。新しいの持って行ってたらよかった。そういえば今書きながらそういう時のためにメガネもってたことを今思い出した。疲れている時は頭もあほになっている。といあえず、中川さんにすごいすごいとおだてられてエイドを後にした。瑪瑙と小さな山を登ったらなんとかなる。もう走りたくないから早く瑪瑙についてほしい。

エイドをでて、それほどたたないうちに、無事に急なトレイルに入った。走らなくても良いから嬉しいけれど、それほど速くは登れない。一応時計で確認すると、1分13mくらいの速度だった。1時間780mで遅いけれど、まあ許容範囲かなと思う。急な階段状のトレイルを登っていくと、休み休み登っているマイルの女子ランナーが。そのままナイスランですって言いながら抜こうとしたら「ぶんごさん?」って言われる。「うん?」誰と思ったら今子さん(今田さん)。「女子トップだよね?」って声をかける。前はすぐそこだよって教えてくれるけど、全然見えない。お互いがんばってって言ってまた前に進む。

一旦ピークに登って、しばらく下り基調で、いよいよ、瑪瑙への登りが始まる。TAKEさんが散々悪態をついていた場所で「ぶんさん頂上はまだですか?」って何回も聞かれたとこやなって思って一人で笑う。だいたい来たこともない山の頂上がどこにあるかなんた知らんわって思ってたなあって。マイルの選手はたまに会うけれど、前を行く丸山さんの影は全く見えない。山頂に近づくと天気が悪くなってきて、雨が降り出した。バラで怪我した手足が急に痛くなる。山頂からはスキー場の下りだった。全然覚えていなかったけれど、眼があまり見えないからあまり速くは降りれなかった。降ってからはゆっくり登りになる。小川があって、ここの水を飲んで、TAKEさんはすごい元気になった。僕もそれにあやかって川の水を飲む。つめたくて生き返る。登りはあと一つ。もう全然走れないので、緩い登りも含めて全部歩いた。下りに入って暗くなってきたので、ヘッドライトを装着する。その時、全然違う方向から降りてくる人と遭遇。ランナーなのか登山の人なのかわからなかったけれど、道を間違えたのかと一瞬焦った。前の選手のことは半分諦めていて、自分のペースで降っていくと、飯綱林道入口のエイドが見えてきた。

エイドには丸山さんが、予想もしていなかったのに追いついてしまった。結構ダメージが大きいですって言われて、ペーサーの山谷さんが、3位でもすごいことなんやでって丸山さんに話している。後ろの差を聞かれる。全然わからないけれど10分くらいはあるんじゃないですかねなんて適当なことを言ってしまう(実際は岡田さんと8分差)。ここは引き離すしかないとバナナを補給して、水を汲んで先にエイドを後にした。あと11kmくだればもう終わりだ!と思っていたが、それは全くの間違いで、今地図をみて、14kmくらいはあることに気づく笑。

エイドを後にして、しばらくは比較的平坦な林道が続いた。ここは良く覚えていて、たまに軽い登りがある。もう走りたくないけれど、頑張って登りもゆっくり進む。たまに後ろをみたけれど、ライトは見えない。真っ暗になってきてライトで見ると、明るい時より地面は見やすくなった。もうすぐ終わりだなあ。こんな大きな大会で準優勝ってすごいなあって思いながら走る。丸山さんはもう追いかけてこないと決めつけていた。家の明かりが見え始めてもう終わりかなって思ったところで、3人くらいのボラの人が立っていてくれて、「あと5kmちょっと、登りもあります」て言われた。え、聞き返したけれどあと5kmちょっとと。衝撃すぎて、「ありがとうございます」っていうのも忘れてしまった。まだ5km以上あるのか。突然、キャタピラの跡がついた超悪路になる。ヴェイパーではとても走れない。ひたすら歩く。悪路もそれほど続くことはなく、スキー場の林道などにつながり、ぼちぼりゆっくり走っていた。そしてトレイルに入る。足首もだんだん痛くなり、暗いので、ゆっくり降りていると、ふと上からくるライトが目に入った。突然髪の毛が逆立つような恐怖が押し寄せる。マイルが追いついてくるはずはない。ライト2個見えた。下屋さんが復活して追いかけてきたのか、それとも丸山さんか。突然脱兎のように下りを駆け降りた。残り距離はまだ3km以上ありそうだ。ほどなく林道に入る。飛ばせるだけ飛ばす。こんなときに林道は上っていく。もう恐怖のあまり必死で林道を走る。こんなところで抜かれるのは絶対いやだ。走っても走っても林道の登りは終わらない。全力を振り絞り登るとまた変な悪路に出た。急な斜面の登りがある。ここはもう走れなくて歩いた。たぶん50mくらいの登りだけど登りきったところで、下からくるライトが見えた。全然離れていない。ここからふかふかのトレイルに入った。ヴェイパーでトレイルを飛ばすのは難しい。もうそんなことは言ってられない。全速力でトレイルを飛ばす。後ろでライトがチカチカしている。はやくゴールについてくれと祈るけれど、トレイルはなかなか終わらない。登りがまだあったら終わりだと思いながら必死で走っていくと、開けたスキー場に出てきて、走りやすい道に変わった。遠くに煌々とライトがついている。これはゴールに違いない。必死で逃げる。途中でゼッケンを確認している人にあった。すごいスピードで通り過ぎたので、ちゃんとゼッケン読めたかなあなんて馬鹿な心配をしてしまう。後ろを確認する。ライトはもう見えない。2位を確信してゴール前に向かう。ちゃんと大槻さんってアナウンスしてくれるかなあって心配している。「大槻文悟さん、ゴールです」よかった、番号わかってくれて。優勝したかのように喜んでゴールした。ゴールでは川崎さんが待っていてくれた。およそ1分して丸山さんがゴールした。あとでSTRAVAのflybyで確認したら、丸山さんとは最後のエイドからゴールまでほとんど同じペースでほとんど差がない状態で来ていたようだった。

パタゴニア公式写真から 左から 丸山さん、川崎さん、そして私

 

岡田さんが4位でゴールして下家さんは5位でゴール。ゴールでマイル9位の阪本さんにも出会う。消耗が激しく、バスで寄ったコンビニでカップ麺のうどんをひとつ食べて、お茶をのんで宿で休んだ。身体中痛くて、疲れていて何回も眼が覚めた。

 

最終に続く

https://bungo1103.hatenablog.com/entry/2022/09/27/211553