遙かなるUTMB

トレランにはまってUTMBまで行ってしまった外科医の日々のトレーニングや備忘録

Nike ズーム ヴェイパーフライ 4% シューズとタイム

巷で話題のズーム ヴェイパーフライ 4%

Breaking 2ですっかり有名になりました


Breaking2 | Documentary Special

 

ランニングに使用するエネルギーは主に2つしかありません

1. 小さなジャンプの繰り返し

2. 脚のスイング

足の先のシューズが重くなると、主にの脚のスイングにエネルギーがいります

100g重くなると約1%エネルギー消費が増えます。意外に小さいですが、トレイルの下りとかの足さばきには重要な要素かもしれませんね。とにかく、平地を走るときにはこれくらいの影響があります

重さだけ考えると、裸足(Barefoot)が一番エネルギーコストが良いことになります。

しかし、普段からシューズを履いている私達での研究では、シューズのクッションがあるほうが、筋肉を使う量が減って、エネルギーがかからないことがわかっています。つまり、軽ければ軽い程よいけど、クッションも大きければ大きいほど良いのです。

ところで、クッションが大きいことは、着地時の衝撃の減少から余計な筋肉を使用しないことは良いのですが(高いところからとんでも、柔らかいマットに着地すれば筋肉の使用量は少ないということです)、通常は着地時のエネルギーが熱に変わって失われやすいという特徴があります。

例えば、砂浜を走るとき、脚には優しいかもしれないけど、反発が戻ってこないからエネルギーがすごくいりますね。シューズを考えた時、クッションが大きくて、反発も大きいという夢のような素材があれば良いことになります(トランポリンみたいなもの)。

トランポリンで使われているような金属バネの使用は禁止されているので、シューズメーカーは、化学合成のいわゆるフォームの開発に余念がありません

ASICSFlyteFoam(フライトフォーム)

adidasはBoost

などなど

これらは先程の1で説明した、ジャンプエネルギーの減少につながります

今回ナイキからでたヴェイパーフライ 4%

科学的分析がされています

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OPEN ACCESS です https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs40279-017-0811-2

まず靴の特性を比較しています

走ったときと同じようにシューズのソールに力をかけて変形と力の関係をみたものです

左からNike zoom streak6, Adidezo Boost2, そしてヴェイパーフライ 4%

同じように2000Nの力をかけたときの変形量に大きな差があります

左の2つは6mmだけどヴェイパーフライは12mm。これはショックの吸収が良いことをしめしています。興味深いのはグラフの青い面積、これは吸収と反発によって失われた(熱になった)エネルギーの和を示しています。ヴェイパーフライはほとんどエネルギーを失わずに元の形にもどっていることがわかります。BOOST2もなかなかで75.9%エネルギーリターンがありますが、ヴェイパーフライは87%

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次に、実際アスリートにはいてもらい、OBLA(乳酸濃度が4mM、多分ハーフマラソンくらいの強度)以下のペース設定で、呼気中のCO2濃度を測定することで、エネルギー消費を測定しました。細かいことを省きますが、一番右のヴェイパーフライ(NP)が他のシューズよりもエネルギーコストが明らかに少ないという結果でした。平均4%エネルギーが小さかったからヴェイパーフライ4%です。

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各社色んなこと言って、いろんなシューズ出してますけど、こうやってきちっと科学的に示してくれると買ってもいいなあって思いますね。高いけど。。。

問題点は、今回の研究に参加しているアスリートは24歳くらいで、10000mの平均タイムが31分ですからね。。。10000mに40分も50分もかかる人が速くなるかどうかはわからないということです。

もう一つ興味深い点は、前足部着地でもかかと着地でも消費エネルギーは減少したようですが、かかと着地のほうがより減少したそうです。そして、他のシューズよりも接地時間が僅かに増えたそうです。

 

最後に私見

普段どのようなシューズをはいているかでも脚の筋肉や健の太さがかわってきます(これはエビデンスあり)。だれもが同じシューズで速くなるとはかぎりません。薄いぺらぺらシューズが最も速い人、裸足が速い人、厚底が速い人色々だと思います。お金があれば、いろんなシューズを履き比べて一番自分にあったシューズを見つけたいですね。

でもヴェイパーフライ4%欲しくなりました(笑)