遙かなるUTMB

トレランにはまってUTMBまで行ってしまった外科医の日々のトレーニングや備忘録

UTMB 2017 ④ COURMAYEUR から CHAMPEX-LAC

UTMB ①スタート前からスタートまで - 遙かなるUTMB

UTMB ② スタートからLES CONTAMINESまで - 遙かなるUTMB

UTMB ③ LES CONTAMINESからCOURMAYEUR - 遙かなるUTMB

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COURMAYEUR

中盤のCourmayeurに帰ってきてほっとする。クールマイユールって発音するのかどうかわからないけど、レース前にTAKEさんがクールメイヤーだって主張していたのがもう随分前のような気がした。

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着替えたところ。。。あとから見ると顔が疲れてるー。知らず知らずのうちに。。。

とりあえずトイレにいったら山盛りの◯◯◯。すっきりした。レース中に行くのははじめてかも。このエイドでも素麺を持ってきてもらって3束食べる。ガスモチンも摂取。塩カプセルも摂取してアミノバイタルも摂取。ちょっと食欲はないけどまだ美味しく食べれた。いよいよ後半。今度のアシストはシャンペ湖だ。今から明るくなるからMilleのアミアミは脱いで、直接ランシャツを着て、INOV8のレインを着た。

外にでるとずいぶん明るくなっている。ふと山をみると、ドーンと山々が迫っている。あまりにもの光景に圧倒された。

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広角で撮るとわからないけど、もう目の前に山が覆いかぶさってくる感じ。

ここからはしばらくロードの登り。細い道とかがあるけれど、一緒に数人のランナーがいるから迷うことはなかった。ちょっと疲れていてゆるい上りでもあまり走りたくなくなってきた。ちょっと疲れが早いなあって思う。まだ半分行ってないよ。しばらくロードを登るとトレイルに入った。きれいなトレイルで歩いて登る。急に脚が重く感じる。脈拍も120までしか上がらなくなった。うーん。こんなに早く動かないのは予想に反するけどまあ登りはゆっくる行こうと決める。周りもにたようなペースだ。

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きついけどゆっくり登り続け、頂上に達した時

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突然目の前にモンブランが飛び込んできた。ちょうど一緒にいたランナーとOh! Mont Blanc!!!って叫ぶ。圧倒的な景色に涙が出てくる。

REFUGE BERONE

山頂はREFUGE BERONEっていうエイドがある。水分を補給してそのまま出発した。順位はいつのまにか170位になった。ここからは微妙なアップダウンがあるも、基本的には走れる区間。左手のモンブランばかり見てしまって、崖から落ちそうになる。気分が高揚して、頭のなかでレースの音楽がぐるぐる鳴り響いている。すごい所を走っている。どんどんスピードが出る。次々とランナーを抜かしていたら、前にしょ~やんが現れた。ちょっと潰れているみたいだ。

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ここからも調子にのって飛ばしまくってしまった。

REFUGE BONATTI

REFUGE BONATTIのエイドでは157位になった。もうすぐ100番を切れる。そう思って快調に飛ばしていると、天候がだんだん悪くなってくる。少しずつ吹雪いてきて気温がどんどん下がってきた。これからフェレ峠なのに大丈夫かなって思う。フェレ峠のまえに結構降ろされる。快調に下ってたのに、突然脚が動かなくなった。同時に微妙な吐き気。あれ、、あれれれ、、、。よくわからないけどちょっとやばい感じがしてきた。速度を落として次のエイドARNOUVAZに向かう。腹の調子がいまいち悪い。

Arnouvaz

なんとかエイドについてすぐトイレに行った。これでもかっていうくらいの山盛りの◯◯◯。うおー、これで快調になるかもって喜ぶ。エイドでもっと食べればよかったけどパンとスープくらいを摘んで少し休んで外に出た。思いの外寒い。川を渡り(橋がある)、フェレ峠に向かう。登りが全然動かなくなった。動けないなんてレベルじゃなくて、全然脚があがらない。脈拍も頑張っても100を切ってくる。おそすぎてどんどん身体が冷える。まだ1800mなのに吹雪いている。風のない場所を探して、レインの下を履き、上も一枚レインを追加した。快調に抜いてきた集団数人に抜かされる。4000mの山でも登っているかのように脚が重く、すすまない。途中に小さなエイドがあってスープをもらえた。暖かくて生き返る。でも脚は生き返らなかった。たくさんの登山客が登っているけれど、大きな荷物をもった登山客とほぼ一緒の速度。ブラボーとか言って待ってくれているから抜かさなきゃいけないけどきつい。このまま上に行けば行くほど気温が下がり動けなくなったらやばいんじゃないかと真剣に思い始めた。吹雪はどんどん激しくなり、スキーのゴーグルが欲しくなる。手袋はテムレスだが幸いにも手は吹雪でも快適だった。ものすごい時間をかけてフェレ峠に到着した。

Grand Col Ferret

ArnouvazからGrand Col Ferretまで738mの登りを1時間28分もかかっている。1時間に500mしか登っていない計算だ。フェレ峠でゼッケンをチェックされていよいよ長い下りパート。ほんのすこし走れた。あーこれで死ぬことはないなあって思った。ゆっくりゆっくりしか走れない。ちょっとでも登ると歩いてしまう。少しずつ抜かれていく。こんなはずじゃないのにと思いながらどんどん下っていく。2000mを下回ると天気がよくなりどんどん暑くなってきたけど服を脱ぐ元気はもうなくなっていた。La Foulyのエイドがあるはずだけど、いけどもいけども無い。あまり記憶に無いけれど、川に沿ってゆるい下りが続く。だんだんゆるい下りも走れなくなり、歩く時間が多くなていく。やっとLA FOULYのエイドが見えてきた。疲れていて情けなくてブラボーっていう応援が苦しい。

La Fouly

エイドに入ってしばらく休まないと真剣に完走できない気がする。あと60kmある。ふと見ると須賀選手がいた。声をかけると脚が痛くて走れないとのこと。リタイヤしようと思っていますって言われた。リタイヤかー。随分辛いくなっているから隣でリタイアしますって言われるとこっちもリタイヤしたくなってくる。ともかくCHAMPEX-LAXまで一緒に行きましょうと提案した。もはや順位やタイムは狙える状況でないことは明らかだった。よくわからないうちに極限まで疲れ果てている。丹羽さんにも追いつけなかった。速すぎる。ともかく食べないといけないと思う。エイドでスープやパンを無理やり食べる。少しエイドで休もうと思う。シャンペには時間がかかりそうなので、母親にSMSで遅れることを連絡した。どれくらい休んだかわからないけど、どうせ歩いて行くからもう行きましょうと、須賀さんと一緒にエイドを出た。ここからトップトレイルランナーの須賀さんといろんなことを話すことができて楽しかった。ゆるい下りもずっと歩きだからどんどん抜かれる。トンネルを抜けたところでとうとうTAKEさんに追いつかれた。TAKEさんが「あー、須賀さんじゃないですか!僕、須賀さんのこと凄いファンなんですよ!須賀さんて大瀬さんと一緒で潰れても絶対リタイヤしないですよね!」って1人で喋る続けている。須賀さんの顔がちょっとひきつっている気がするけれど、須賀さんはこれでリタイヤできなくなった。

いよいよシャンペまでの登り、結構がっつり400mほど登らされる。僕も全然脚が動かないけれど須賀さんはさらに動かなさそうだった。このまま全歩きでゴールまで行くとすると約44kmが時速2kmで22時間???完走間に合わない???なんて計算をしてしまう。実際には相当へばっていたフェレ峠の登りでも時速3.5kmくらいは行っているから完走はできるはずなんだけど、随分悲観的になってしまう。そして長い長い歩きが終わってなんとかCHAMPEX-LACのエイドに到着した。

CHAMPEX-LAC

到着したけど、僕があまりにも遅かったためか両親はいなかった。椅子に座ってぼっとしながら「ついたよ」ってsmsを入れてみた。疲れすぎていて動く気も起きなかった。数分するときれいなお姉さんが来て、大丈夫って?聞いてくる。次の言葉はなんと「リタイヤしたい?」だった」。エイドではみんながんばれーとかブラボーとか言ってくれるけど、普通じゃリタイヤしたい?とか聞いてくることは絶対にない。よっぽどひどい顔をしてたんだなあって思う。

その時のひどい顔を。これはすでにエイドで2時間休憩後のまだましになった顔だ!

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エイドで休む決心をした。1時間ほど横になろう。素麺を食べてから、テントに毛布が敷いてあって寝れるところがあった。誰も居ないので独占だ。しかしおそろしく寒い。ストーブの横に陣取って身体を丸めて横になる。全然眠れた気はしないけどすぐに1時間経ったから少しは眠れたのかも。戻ってきたら両親が待っていてくれた。少し食べないとと思いけど、食べるとやはり吐き気がする。母親は僕の顔がひどすぎて、もうやめても良いよって言ってくる。まあそうだろうな、はじめて走る姿をみるのに、こんなボロボロだったらそう思うのも無理はないのかもしれない。気がつけばシャンペについて2時間が経過していた。順位は300台に突入だ。潰れたらあっという間だ。夜になってくるから峠の寒さが怖いけど、須賀さんと約束したし絶対完走しようと思って走ってエイドを飛び出した。

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